『言葉の好き嫌い』

【No 0020】 [2006年03月08日(水) 13時25分49秒]

言葉。
言わないために誤解を受けたり、一言多くて物事をこじらせたり、なかなかに難しいものです。
言葉は一瞬にして消え去りますが、毒のように心に傷を残します。
けれど人はその言葉に励まされ、一つの言葉に心を支えられて生きているのも事実です。
『目は口ほどにものを言う』という言葉がありますが、ぶっちゃけ目よりは口で話した方が自然だと思います。
自分自身を伝える一番確実な方法が言葉なのですから、言葉をもっと大切にしなくてはいけません。

言葉は全ての人に平等です。
それを美しい宝物にするのか、毒に変えるのかは使う人間次第です。
また美しい宝物と聞くか、毒として受け取るかも聞く人間次第です。
世の中は美しく心地よい言葉を使い、好意を持たれる会話術を身につけることにはウエイトを置いています。
しかし、言葉のキャッチボールという言葉が示すとおり、言葉には発する側と受け取る側があります。
こう話せばいいというノウハウがあるのなら、どう聞けばいいと言うノウハウがあっても良さそうなものですが、これがけっこう無いのです。
そもそも聞くという事を、聞く姿勢とか心構えととらえがちです。
でも、実際に聞くとはどう言うことなのか?
それは、どう受け取るかとか、どう感じるかということなのです。
一つの言葉をどう受け取るかは、言葉の責任ではなく、受け手側の都合です。
同じ言葉でも、受け取り方はその人次第ということになります。

少し前に友人が家に遊びに来ました。
私より少し若い未婚の女性で、もちろん子供はいません。
子供のいない人間にとって相手の何気ない言葉にとても傷つくことがあります。
先日も行きつけのコスメショップの店員さんに「○○さんは若いよね、お子さんは?」と訪ねられ「居ません、結婚してないし…」と答えると「やっぱりねぇ〜」と言われたのだそうです。
たとえそれが普通の人には何気ない言葉であっても、彼女の心のフィルターには引っかかってしまいます。
ここに書いているから気遣いの無い言葉だと思えるかもしれませんが、これは世間一般では普通の会話です。
そこで、子供が居ない人生を長らく生きている私は彼女にこう言いました。

「その店員さん褒めてくれたのよ。若いってなんの褒め言葉でもないのに、ボキャブラリーの未熟さで若いを褒め言葉とはき違えてるのよ。褒めたいんだったら若いじゃなくて{綺麗}よね!まっ、とりあえず褒められたんだから喜んどきなさい。で、その店員さんはあなたと同じくらいの歳なの?だったら聞き返してあげたの?『お子さんは?』って。それで何人ですとか何歳ですとか答えたら、同じように『やっぱりねぇ〜』と言ってあげなさい。同じ言葉を返してあげるだけで気分良くなるわよ。ただし相手はイヤな顔をするでしょうけどね。(笑)」

同じ言葉でもその人の都合によって感じ方が違います。
同じ言葉をよく似た都合を持ち合わせた私と私の友人が聞いても、感じる重さに違いがあります。
「じゃ、私も今度からそう言うわ♪」と笑いながら帰っていった彼女は、けしてこんな風に言い返すとは無いでしょう。
でも、次に同じようなことを言われても、今の彼女は軽く受け答えが出来る気がします。
どのように聞き、どう受け止め感じるか。
一番自分のためになる聞き方が、必ずあなたの中にあると思います。
心のフィルターに引っかかりがあると言葉はなかなか素直に流れず、どんどん溜まって重くなりますよ。