『水族館の本』1


文字を書くことは、自分の気持ちと会話したり、確認をとったりすること。
私にはそういうもののようです。
どうも口べたで、人前で話すことは苦手なのですが、
「書くことは、あなたにとって言葉と一緒ですものね」って、ある方に
言ってもらえた事が、気持ちを楽にしてくれています。
人に気持ちを伝える方法は一つじゃありません。
言葉や文字、そのもどちらもが心に残るものです。
でも文字や本は、時間がたった後も幾度も心の扉を叩いてくれます。
だから残したい思いは、本という宝箱に入れて欲しいのです。

大好きな水族館に、とても大きなオタリアが居ました。
彼はショ−をするオタリアとして活躍した後、ゆったりと余生を過ごし、
つい最近ですがこの世を去りました。
お客さんに愛され、メスオタリアに愛され、何より彼を飼育していた
方々に心より愛されていました。
「クロ」というオタリアです。
彼が残したくれたものは貴重な飼育デ−タと、心の記憶。
飼育の方々は、出来る限りをやり尽くして彼を見送ったはずです。
でももし、もしまだなにか出来る事があるとすれば、記録と記憶を
これから先も沢山の人に覚えていて貰うことかもしれません。
彼は人間の都合で、オタリアを知るという目的のため水族館に
やってきた生き物です。
人間側の思いに他なりませんが、彼が水族館の生き物として
暮らした日々は、何一つ無駄にしてはいけないのだと思います。
大好きなクロの本があったらいいなって、
最近とてもそう思います。

生き物が教えてくれることは、教科書以上に考えさせられる事が多いです。
皆さんご存じの上野動物園のゾウの花子の話などは、
子供の頃に読み、今も忘れられない衝撃で心に残っています。
衝撃と言うか、バケツを持って廊下に立たされ、
そのバケツをいまだ持ち続けているような感覚です。
それでも真実だし、読んで良かったと思っています。

最近行った「沖縄美ら海水族館」の
『がんばれマナティの赤ちゃん』などは、子供向けの素敵な本でした。
生きようとするものと、その命を守ろうとするものの懸命さがひしひしと
伝わってきました。
水族館って考えてみれば、そんな毎日の連続なのですよね。
言われてみて(読んでみて)あらためて気づきます。
水族館で生き物を見て、本を読んで、きっといつもの数倍、水族館が
楽しめると思います。