全日本ラリー選手権 JRC Rd.1『ひえつき 05』宮崎県
[HP]宮崎県・椎葉村  総走行距離=280km SSトータル距離=約50km
SSの路面=グラベル  ギャラリーステージあり。
主催:ルート・テン・延岡 TEL:0982-32-3682

 全日本ラリー開幕戦。
薄曇りの少し肌寒い天候の中、緊張と期待で始まったSS1。
競技車両の通過を知らせるホイッスルがリレーされギャラリーコーナーへ近づいてきた。
高鳴る心音が近づくエンジン音にかき消された途端、ゼッケン7番の炭山裕矢が視界に飛び込んでくる。
はじかれたように立ち上がるギャラリー!
その目前を黒いインプレッサがインに張られたスポンサーフラッグを巻き込むように美しく走り抜けていく。
おお−−っ!というどよめき、コーナーに消えた余韻後に歓声が上がる。
そこには始めて炭山選手を観たときに感じたオーラがくっきりと存在していた。


 2005年、5月21日。
和歌山から12時間、やっと宮崎県椎葉村に到着。
一睡もしないまま妙なテンションで、とりあえず宿泊先の『鶴富屋敷』に荷物を置かせていただいた。
ギャラリー受付にまだ1時間程余裕があったけど、気を抜いたら寝ちゃいそうなのでそのまま時間をつぶす。

受付に行くと、ルートマップを渡された。
これを頼りに観戦場所まで移動するらしい…さすがに相方は器用に谷底へと誘う私のナビを巧みに聞き流し、無事目的地に到着。
実は、この道がとんでもない道で、大きめの石やら段差ばかりか所々穴まであいており、我が家のインプレッサのフロントバンパーも幾度となくイヤな音を立てて土にめり込んでいた。
この道がそのままSSコース・・・・。
ラリー・カー…っていうか、ここを全力疾走する選手ってやっぱり凄すぎ。(-_-;)
バンパーがガリガリで黄昏れる相方を励まし、ラリー・ジャパンの時に買った折りたためチェアを担ぎギャラリーポイントへと移動する。
とりあえず空いたところでイスを広げ、相方はカメラとビデオのセッティング。
私は炭山選手のフラッグをスタンバイ。
別に選手の方から見えるわけではないが、これはもう気分の問題。
嵐の前の静けさというのか、気づくと木々のそこココからウグイスがさえずりが聞こえる、気持ちいい♪

ふと前を見ると、私達の横に座っていた家族連れの一番下の女の子(小学生低学年くらい)が無邪気にコースを指さしている。
「あそこからドリフトしながらこう入って来るんだよねぇ…」こう入ってくるの「こう」の部分では手にちゃんと角度がついている。
お…お嬢ちゃん、君はいったい何者なんだ!!
(KIKUZO氏へ、娘を日本一速い女にするには、すでに幼稚園児でこれくらい語れる必要有りと思われます)

 のんびりと時間が経過し、自分の掲示板に慣れない携帯からコソコソ書き込みをして待っていると、0カー通過とのこと。
聞き慣れたサイレンの音がないのでチョッとがっかりしたけど、0カーがカッ飛んでいくのを見た途端、今までなごやかだったギャラリーコーナーがいきなり緊張感に包まれはじめた。
間合いを置き、ホイッスルの音が聞こえる。
皆の視線が集中する一点に奴田原文雄のランサーが現れた途端、興奮はMAX状態に。
どよめきと感嘆の声が交錯する中、砂埃が容赦なく巻き上がる。
それさえもラリーのギャラリーにとっては御馳走。
だけど、喉が弱い私はタオルを口に当てとても怪しい風体に変貌する。
次々に選手達が華麗に走り去るのを見るなか、「次だよ」と相方が私にささやいた。
そう、これからがジュディーの開幕戦です!
来た!!”
イスを跳ね上げて立ち上がった先に見えたCUSCOインプレッサは、誰よりも速く姿勢を作ってコーナーに進入し、そのまま力強く上石を掃いて次のコーナーへと姿を消していった。
「見た!見た!?今年の炭山選手やっぱり良いよねッ!」興奮しながら相方に話しかけると相方も「うんうん♪」と頷く。
炭山選手もだけど、車が良いんだろうなぁ♪
嬉しくてホッとしてイスに座り、次々にアタックする選手を観ていると、何か様子がおかしい。
どこかでアクシデントがあったらしいけど、炭山選手が通ってからもうずいぶん経過しているし、まさかね、と私は気にもとめていませんでした。

 しばらくして、オフシャルの人達があわただしく無線でやりとりをしている声を相方が漏れ聞きいた。
「おい、今7番って言ってたぞ!転倒とかなんとか・・・・」
「え〜っ?ん〜なこと無いでしょ。」 信じられないし、信じたくもない事である。
「聞いてきたら?」
相方は言うが、確かめて事実を知るのが恐い。
でも、このまま居る方が耐えられないので、とにかくテントの中に座っていたオフシャルさんの所に行ってみる。
マッタリとした雰囲気の恐く無さそうなおじさんに恐る恐る訪ねてみた。
「あの…なにがあったんですか?」
「ああ、この先で7番の車がひっくり返って、競技中断してます」
「!!!・・・・・・・選手の人に怪我は!!」
「ドライバーはなんともないらしい。コドライバーの額にガラスが刺さったらしいけど軽傷らしいです」
「・・・どうも、ありがとうございました。」
呆然としている私を心配してか、「あんたのところの車か?」と聞いてくれる。
「いえ、とんでもないです。応援しているチームの車両で…」
「大丈夫や、軽傷って言ってたからな」
「はい、すみません」
お礼を言って相方の所に戻り、聞いてきたことを説明する。
少し時間がたち、競技が再開されそのまましばらくは観戦していたが、どうも居たたまれない気分になり車に戻ることにしました。

これは競技中の転倒で、ディフェンディングパーツガチガチのラリーカーで、なんともないとか、軽傷だとか言われても、ジュディーには少しトラウマがありました。
ジュディーは一人っ子なのですが弟のように可愛い従兄弟が居て(三菱のメカニックでした)、その子を事故で無くしています。
なので、転倒=事故と聞かされた時に思い出してしまったみたいです。
まるで関係ないことなのに、ほんの小さなキーワード一つで…こういう事って何年経過しようと、ふとした弾みに思い出してしまうようで…。
車に戻ると少し気分が落ち着いてきて、寝ていなかったせいもあり帽子を顔に乗せて少し横になっていることにしました。
しばらくすると相方がソッと帽子を持ち上げ顔を覗き込んでいます。
炭山選手がリタイアして凹んで泣いてないか心配してくれているようです。
確かにチョッと泣いたけど、状況もわからないのに泣いてても仕方ないし、でもジュディーは相方の優しさに泣きそうです。

 ようやく観戦ポイントでの競技が終わり、ギャラリーが車に引き上げて来ました。
サービスパークに行って詳細をお聞きしたいというか、無事な姿を確かめたいという気持ちがはやりますが、山の一本道を一台ずつ下りていかねばならないため、なかなか思うに任せません。
けれど一旦林道に出てしまうと、これがなかなかに普通じゃないんです。
こういう所に来ている人はだいたい運転が大好きな人達ばかりなので、下りていく速度の速いこと速いこと・・・。
他の関係のイベントでは考えられない速度だろうと思われます。
しかしココに落とし穴が有りました。
ラリーカーが通った後で、なおかつ一般車両も沢山通った後の路面は、あがってきたときより数段悪くなっていたのです。
それだけに来るときチェックしていた場所はよりいっそうデンジャラスな状態で、我が家のインプレッサ君のフロントバンパーは、バキッ!ベキッ!とイヤな音を立てて粉砕してしまいました・・・。(合掌)
「車=愛」なウチの相方、本当ならすぐに車を止めて見たいところだけど、後ろからドシドシ下りてくるのでそのまま走ることに。
今回私のワガママできたようなものだから申し訳ない気持ちでいっぱい…。
星野選手の怪我も気になるし・・・。
そんなこんなの気持ちで「せっかく来たのに炭山選手はリタイアだし、車ドロドロだし・・・」と凹みきっていると、
「炭山選手は一秒でも速く走ろうと思って限界ギリギリで走って転倒したんだから」と炭山選手をかばってくれる相方。
ありがと、おかけで元気になれそう、願わくば後でバンパー見て錯乱しないでね。

 さて、二人して精神的にボロボロになりなから、とりあえずサービスパークへ。
しかし、ここから肉体的サバイバルになろうとは、この時まで思いもしませんでした。
たしかにJRCAのHPにあるひえつきラリー事前紹介には『運動公園まで約800mを徒歩にて上ってください。』と書かれていました。
気にはなっていたのだけれど、それほどのこともあるまい、とタカをくくっていた私がバカでした。_| ̄|○
総合運動公園・・・確かに運動しまくりました、その名前はダテではありませんでした。
ロッキーのエンディングテーマが頭の中を流れる中、やっと感動のサービスパークへ辿り着いた後、目指すCUSCOのテントを探します。
テントを覗くと、人は沢山いらっしゃるのですが誰も知ったお顔の方がいらっしゃらない…。
なるほど、この方達が現地のメカニックという方なのですね。
でも、メカニックの方達に「炭山選手は…」と、お聞きするのがなぜか切なくて、石原さんから「ひえつきには自分が行きます」とお聞きしていたので、「あの、石原さんは?」と、お尋ねしました。
「いま車を引き上げに行っています」
「そうですか、お怪我の方はどうなんですか?」
「ココにいると意外と情報が入ってこなくて、よくわからないんですよ」
そうなんだ・・・。
とにかくCUSCOのテントでクルーとメカニックさん達が帰ってくるのを待たせていただくことに。
だって、もう立っているのもきつい状態で・・・。(@_@;)
しばらくすると普通の車に炭山選手と星野選手、それに石原さん大久保さん達が乗って帰っていらっしゃいました。
炭山選手も星野選手もどこにも怪我をした様子は無さそうです。
良かった!!
笑っていらっしゃいますが、それを見るのも辛いです。
お疲れ様でした。不完全燃焼かも知れませんが、とにかく怪我が無くて良かったです。
炭山裕矢選手に今回の御言葉をいただきました。『ラリーは難しい』皆さんメモメモ・・・。
他の方達から不死身の星野さんって呼ばれていました。
オフシャルの人が軽傷と言いながら、手のひらをチョップ状態にして「ガラスが額にこう刺さって…」って説明されたら軽傷なんて信じられないじゃないですか!!マジそうなら致命傷ですって!(^_^;)
とにかく安心して、いらんこと喋りまくってうるさくしてすみませんでした。m(_ _)m
美味しそうです♪いえ、メカニックのお兄さんではなく「うどん」がです。
皆さんが昼食の冷やしうどん?食べていらっしゃいます。このとき炭山選手は・・・・・。
電話中です。
監督に電話をしているのではないかな?と大久保さんが言っておられました。
炭山選手お酒は飲みませんので、差し入れはお菓子かと思われます。
その後、抹茶カステラと大納言カステラを差し入れに持って行かせていただいたのですが、なんと炭山裕矢選手自らカステラを切って下さいました。
 食べてくれています♪
この顔ばかりではイメージが良くないので、カッコイイ顔も入れておきます。
キリッ!
この後、インカーのビデオをチェックされていましたが、私達が撮ったビデオも真剣に見て下さっていました。
う〜ん・・・。
なので、後日CDに焼いてお送りする約束をいたしました。
皆さんで並んでいただきました。カッコイイ〜・・・♪
今回は残念でした。
すごく楽しみにしていたラリーだったので私が結構凹みましたけど、ラリーという競技を好きになったのだからこういうときもありと言うことで、なにかとてもいろんな事を勉強させていただきました。
私なんかより炭山選手ご本人がどれだけ悔しい思いをされたか考えると、とても辛くなります。
でも、開幕戦って事はこれからって事で。
選手は誰でも頑張ってるんだし、だからそれ以上限界ギリギリで攻める人間だけが頂点に立てるんです。
炭山選手はそれなりの順位ではなく上を取りに行ったのですから、なにの問題もありません。
実際転倒直前までのタイムは凄かったみたいです。
だからファンとしては落胆なんかしてられないですよね。
今回撮ってきたビデオを何度か見ましたが、やっぱり今の炭山選手、凄いと思います。
このまま突っ走って下さい!!
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引き上げられてきた車両。
ガラスが割れてペコペコに傷が付いてるけど、ゲージ内は完全に無傷。これが一回転半ほど転がった車だとはとても思えません。
メカニックの皆様、また忙しくなりそうですが頑張ってなおして下さい。(T_T)/
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It returns.